【警鐘】離婚後の共同養育について、被害者支援の立場から語る

自民党幹事長代理であり共同養育支援議連会長の発言
弁護士資格を有する自民党議員の発言
アベプラでの梅村みずほ議員の発言を書き起こしたもの

DV被害から避難するための子連れ別居を「誘拐罪」になると脅す、離婚後も原則的な共同養育・共同親権を主張するなど、共同養育支援議員連盟の各人の発言に非常に危機感を抱いています。
ほとんどのDV加害者は自身の加害行為を自覚しておらず、“ある日突然”配偶者が子どもを連れて自宅からいなくなります。数日すると弁護士からの受任通知や裁判所からの調停通知書などが届き、DVが原因で配偶者が離婚を望んでいると告げられます。
そこで、もしあなたが当事者だった場合、どんなことを思うでしょうか。まったくそんな自覚はなかったけれど、自分でも気づかないうちにパートナーを傷つけていたのだろうか…と自問自答するのではないでしょうか。しかし実際に加害行為をしている人は他罰的な傾向が顕著で、相手の主張を受けて自らの行動を省みることはほぼなく、DVなどしていない、自分は家庭がうまくいくようにすべきことをしてきただけだ、DVなんてでっち上げだ、子どもを連れ去られた、誘拐だ、犯罪だ、となるわけです。
他方、DVの被害を受けたと主張するケースで、十分な証拠がない場合はもちろんあるでしょうが、証拠がないこととDVがなかったことは決してイコールではありません。巧妙な加害者は被害者が決して証拠を残せない方法で加害をおこないますし、被害者自身に被害を受けている自覚がない、あるいは自分にも原因がある(から被害に遭っても仕方がない/加害者によってそう思い込まされている一種の洗脳状態)と考えていることも少なくありません。後者の場合に加害者から先述のような主張があると、客観的かつ一時的にはDVのない離婚事案と映るかもしれませんが、実際には弁護士や支援団体が介入することで被害者は被害を自覚し、加害者は荒唐無稽な持論を振りかざして加害行為の正当性を主張し始めます。そして被害者に被害を自覚させた弁護士や支援団体までをも逆恨みし、金儲けだ、捏造だと騒ぐのです。
虚偽DVの可能性を主張する方々が、実際どれぐらいの割合でそれが存在していると考えておられるかは不明ですが、加害者が100人いれば99人は加害の自覚がないでしょう。自覚しているのは適切なプログラムやカウンセリングに参加するなどの関わりがあったごく少数であり、そういう気づきを得た人たちは二度と虚偽DVなどとは言わなくなります(そういう意味でも、加害者を更生させる取り組みは喫緊の課題といえます)。つまり虚偽DVがたとえ一定数存在していると仮定しても、少なく見積もっても9割以上いる自覚のない加害者が主張する虚偽DV発言の割合のほうが圧倒的に高く、それをもって子連れ別居がまるで違法行為かのように批判されるのは被害者視点が欠落していると言わざるを得ませんし、二次被害以外の何物でもありません。
共同養育議連に名を連ねる方のなかには、「モラハラはDVではない」かのように主張する、DVを根本的に理解できていない方もいらっしゃるようですので、改めてDVについて説明しておきます。
加害者側にその意図があろうとなかろうと、相手の心や身体が傷ついていればそれはすべて「暴力」であり、暴力という手段をもってパートナーを支配・コントロールすること/しようとすることがDVなのですから、モラハラも当然DVですし(程度の問題ではありません)、加害者が自覚していない不機嫌オーラや無視なども精神的暴力によるDVに該当するといえます。
また、加害者の多くは男性であり、生まれながらにして与えられてきた特権に気づかないまま結婚して家庭を持ってしまうことで、妻や子どもは自分の思い通りにできる(すべき)ものであると思い込んでいる人も少なくありません。そのような誤った価値観を正す機会も、被害者が被った被害の度合いに応じた罰則も与えられないまま加害者が野放しにされている日本という国において、現状被害者が取り得る選択肢は「逃げる」か「我慢する」しかないのです。たったふたつしかない選択肢(機能すれば加害者更生という道もありますが、現段階で強制力はありません)から「(子どもを連れて)逃げる」という選択肢を奪うことによって、どのような結果を招くことになるかは言わずもがなではないでしょうか。
私も、共同養育や共同親権のすべてが悪いとは思いません。DV関係でなければ、また子どもがそれを拒否していなければ、離婚後も父親と母親が子どもの養育に平等に携わる権利は保障されて然るべきでしょう。しかし、議連が主張するように「DVには虚偽の場合もある」ということを前提に話を進められてしまっては、本当にDVの被害に遭いながらも証拠がない、あるいは司法の場で認定するに足りない主張であると判断されてしまうケースの場合、私たちが最も恐れる結果が待っていると思うと、声を上げずにはいられません。
原則でも選択制でもなく、一方が被害を訴えた場合は「共同~」は適用せず、これまで通り司法の場で子の監護養育に相応しい親権者を設定する、という制度を望みますが、それは現行の法制度と大差なく、双方が希望すれば共同で養育できますよ、ということを実現するために法律を変えてまで、さらには望まない人にまで強制する必要があるのか、そこにこだわる理由は一体何なのかと疑問を抱きます。
婚姻時から主体的に監護養育に携わることなく、離婚してから共同親権や共同養育を主張しても、本当に子どものためにそれが必要だと思っているという説得力がありませんし、被害者は離婚が成立しさえすればDV関係から脱却できるわけではなく、離婚後も子どもを使ったDV関係が継続される危険に晒されます。離婚後の親権者がそれまでの主たる養育者であった母親になることに虚偽DVとの関連性はなく、未だ大多数の女性がワンオペで家事育児を担っていることの当然の結果であり、妻に親権を取られたことがまるで敗北であるかのように感じる夫を慰めるための「共同~」であってはならないと考えます。
真摯に子どもの為を思うのであれば、推進すべきは「共同~」ではなく(繰り返しますが、DV・虐待のない家庭であれば現行法で実現可能)、DV防止法改正・支援体制の拡充、加害者を更生させるための強制力を持ったプログラム実施の推進(受けない場合は収監し懲役刑などの厳罰化)ではないでしょうか。少なくとも、子どもを連れてシェルターに避難したとき、「連れ去り勝ち」にさせないために子どもを児相で保護するというような発想は、子どもの安全を最優先に考えているとは言い難いと思います。
性暴力にしてもDVにしても虐待にしても、日本は加害者に甘過ぎます。それがなぜなのか、彼ら政治家の発言がすべてを物語っているように感じました。
以前からお伝えしてきたことではありますが、暴力被害に日々怯えながら生活をしているすべての被害者とその子ども達が、安心して生活できる環境を一日も早く整えられるような法整備(被害者支援)と、加害者が二度と加害行為に及ばないための更生プログラムの推進(加害者更生)、そして子ども達を加害者にも被害者にもさせないための教育(防止教育)の三本柱で、この問題に取り組んでいただきたいと切に願います。
私たち自身も、政党や各議員がどのような思想・信念をもって政治活動に取り組んでいるかを慎重に判断しながら、大切な一票を投じる責任があると思います。どのような日本を次の世代に受け継いでいくのか、ひとりひとりの力は微力でも、私にも何か出来ることをと思い、長文になりましたが書かせていただきました。この問題に関しては引き続きTwitterなどで発信していきたいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。

※※アベプラでは見逃し配信であと4日見られます※※
“子連れで逃げたら罪”に? DV被害家族をどう守るか&DV認定の範囲を議論 @ABEMA で無料配信中 https://gxyt4.app.goo.gl/o4MQz

※※YouTubeではダイジェスト版が見られます※※
【誘拐】「被害者が逃げ続けなきゃいけない国」子どもの連れ去り問題どう解決?なぜ加害者に配慮?フローレンス駒崎弘樹&共同養議連と議論|#アベプラ《… https://youtu.be/CtCK5SeLeCU @YouTubeより

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